労働者派遣事業とは

労働者派遣事業とは、派遣元事業主が自ら雇用する労働者を、自己のためにではなく、派遣先事業主に派遣して、その派遣先の指揮命令を受けて派遣先のために労働させ、報酬を受ける事業です。
労働が派遣先の指揮命令下で行われる点が、請負契約の場合と異なります。


労働者派遣事業図式
この定義に当てはまるものは、その事業として行っている業務が適用除外業務に該当するか否かにかかわらず、労働者派遣事業に該当し、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(以下「労働者派遣法」という。)の適用を受けます。

1. 労働者供給事業との関係
労働者派遣事業は、昭和61年の労働者派遣法の施行に伴い改正される前の職業安定法第44条によって労働組合が厚生労働大臣の許可を受けて無料で行う場合を除き、全面的に禁止されていた労働者供給事業(下図 i. 参照)の中から、供給元と労働者との間に雇用関係があり、供給先と労働者との間に指揮命令関係しか生じさせないような形態を取り出し、種々の規制の下に適法に行えることとしたものです。
したがって、残りの形態(下図 ii. 参照)-a. のように供給元と労働者との間に雇用関係のないもの、及び b. のように供給元と労働者との間に雇用関係がある場合であっても、供給先に労働者を雇用させることを約して行われるものについては、従前どおり、労働者供給事業として職業安定法第44条に基づき全面的に禁止されています。
(労働者供給事業)

i. 法施行前
労働者供給事業図式i

ii. 法施行後
a. 労働者供給事業図式ii-a
b. 労働者供給事業図式ii-b

2. 請負との関係
請負とは、労働の結果としての仕事の完成を目的とするもの(民法第632条)ですが、労働者派遣との違いは、請負には、注文主と労働者との間に指揮命令関係が生じないという点にあります。
(請負により行われる事業)
請負図式
ところが、この区分の実際の判断は、必ずしも容易でないことから、この判断を明確に行うことができるように「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(昭和61年労働省告示第37号)が定められています。

労働者派遣事業の許可

労働者派遣事業を営むためには労働者派遣事業の許可が必要です。
※2015年(平成27年)の労働者派遣法改正で一般労働者派遣事業(許可制)・特定労働者派遣事業(届出制)の区別が廃止され、すべての労働者派遣事業が許可制となりました。
そのため、労働者派遣事業を行う場合、管轄の都道府県労働局に対し、事前に許可申請の手続きが必要となります。
労働者派遣事業を行おうとする場合は、許可申請手続きとして、必要書類を事業主(申請者)の主たる事務所を管轄する都道府県労働局に提出しなければなりません。
申請は、事業主単位(会社単位)で行います。
許可申請は、事業開始予定時期のおおむね2~3か月前までに行う必要があります。
(許可までは、申請後2か月~3か月くらいかかります。)
労働者派遣法に基づく許可申請や届出については、社会保険労務士の「独占業務」となっているため、派遣事業許可のサポートを行うことができる専門家として、安心してご依頼いただけます。

許可基準

労働者派遣事業の許可を取るためには、主に、次の3つの要件をクリアする必要があります。

  • 財産の要件
  • 人員の要件
  • 場所の要件

まずは、この3つの基準をクリアできるか、確認してみましょう。

①資産(繰延資産および営業権を除く)の総額から負債の総額を控除した額(以下「基準資産額」という)が2,000万円に当該事業主が労働者派遣事業を行う事業所の数を乗じた額以上であること。

②基準資産額が、負債の総額の7分の1以上であること。

③事業資金として自己名義の現金・預金の額が1,500万円に当該事業主が労働者派遣事業を行う事業所の数を乗じた額以上であること。

派遣会社には、派遣労働者にしっかりと給与を支払ったり、社会保険料や労働保険料を支払う資金があるのか、適性な運営を行っているか、という要件が求められます。

具体的には 基準資産額が2,000万円以上あるか 資産のうち、現金が1,500万円以上あるか

この2点を直近の決算書で満たしている必要があります。「基準資産額」は、「資産」から「負債」を引いた額です。

現金や売掛金などの資産が2,000万円以上あったとしても、借入金などの負債があれば、資産要件を満たせていない可能性がありますので、注意が必要です。

基準資産額が2,000万円以上あったとしても、資産の内訳のうち、現金が1,500万円以上を占めていなければ派遣業の許可を取ることはできません。

財産要件を満たすためには、公認会計士の証明を受けて、中間決算を行う。(当事務所では、提携の司法書士・公認会計士と提携しているので安心です。)

④当該事業が専ら労働者派遣の役務を特定の者に提供することを目的として行われるものでないこと。

⑤個人情報を適正に管理し、派遣労働者等の秘密を守るために必要な措置が講じられていること。

⑥事業主(申請者)が派遣労働者のキャリアの形成を支援する制度を有すること

⑦派遣元責任者として雇用管理を適正に行い得る者が所定の要件および手続きに従って適切に選任、配置されていること。

派遣元責任者の業務とは?

  • 派遣する労働者の個人情報の管理派遣元台帳など、派遣業務に必要な書類の作成や管理 派遣労働者や派遣先の相談、苦情の受付 など

派遣元責任者になるには?
・派遣元責任者講習を受講(許可の申請の受理の日前3年以内の受講に限る)した者であること。
・成年に達した後、3年以上の雇用管理の経験を有する者であること。

派遣元責任者は、トラブルがあった時や労働者の方の相談苦情に対応出来るよう、常に業務を行える人でなければならないので、非常勤の方や、他の会社の社員・役員として働いている方は、原則なることが出来ません。

派遣元責任者講習は、様々な機関が実施していますので、インターネットなどで検索して申し込めば簡単に受講することが出来ます。講習期間は1日で、派遣業務に必要な基本的な知識を習得するための講習です。

代表取締役の方自らが派遣元責任者になることも出来ますし、誰かを雇って派遣元責任者として働いてもらうことも可能です。

職務代行者の選任が必要

派遣元責任者がやむを得ず業務を行えない時に、代わりに業務を行う人を選んでおく必要があります。

職務代行者については特に資格や要件はありませんが、「週に1日だけの非常勤」、「短時間勤務のパートタイマー」、といった方では現実的に代行できませんので、選ぶ際には注意が必要です。

キャリアコンサルタントの選任

派遣会社は、ただ労働者を派遣するだけでなく、派遣される労働者の方のキャリア形成のために、

  • 段階的で体系的な教育訓練 ・希望する労働者に対するキャリア・コンサルティングを実施しなければなりません。

その相談窓口として、キャリア・コンサルタントを配置する必要があります。

キャリア・コンサルタントは特に資格が求められる役職ではありませんが、「キャリア・コンサルティングの知見を有すること」という要件が設けられています。

今までに労務管理を行った経験があったり、キャリアコンサルティングに関して少しでも知識のある方を選任しましょう。

派遣元責任者とキャリア・コンサルタントを一人の方が兼務することは可能です。

つまり、「派遣元責任者+キャリア・コンサルタント」が1名、「職務代行者」が1名、最低2名の方がいれば、派遣会社の立上げは可能となります。



⑧事業所について、事業に使用し得る面積がおおむね20㎡以上あるほか、その位置、設備等からみて、労働者派遣事業を行うのに適切であること又「派遣業務」を営むことを貸主が了承していること

事業所が賃貸の場合は、賃貸借契約書の使用用途に「労働者派遣事業所として使用する」という文言が入っているかが重要です。既に借りている物件の場合は、面倒ですが、契約書に文言を追記して契約しなおすか、貸主の使用承諾書を作成する必要があります。

事業所内には、労働者の方が安心して相談できるように、面談スペース(パーテーションなどで区切り、プライバシーに配慮した空間)を作ります。

その他

労働保険・社会保険への加入要件
→加入要件を満たしている労働者がすべて適正に労働保険・社会保険に加入していなければなりません。

・教育訓練に関する要件
→安全衛生法59条に基づき実施が義務付けられている安全衛生教育の実施体制の整備をしている必要があります。

・個人情報に関する措置の要件
→派遣労働者の個人情報を適正に管理するために、個人情報適正管理規定を定める必要があります。

・就業規則または労働契約書の記載事項に関する要件
下記の事項を就業規則または労働契約書に記載しなければなりません。

①教育訓練受講時間を労働時間として扱い、相当する賃金を支払うことを原則とす
 ること。

②無期または有期雇用派遣労働者を労働者派遣契約の終了のみを理由として解雇し
 ないこと。

③無期または有期雇用派遣労働者であるが労働契約期間内に労働者派遣契約が終了
 した者について、次の派遣先を見つけられない等、使用者の責めに帰すべき事由
 により休業させた場合には、労基法26条に基づく手当を支払うこと。

労働者派遣事業申請代行費用

新規申請 225,000円(税別)
更新申請 125,000円(税別)

(注)各種登録免許税、印紙代は含まれていません。法定費用が必要となります。

(法定費用) ※労働局へ納める費用
新規申請時 許可手数料:120,000円(事業所が2つ以上の場合、1つ増加毎に+55,000円)
登録免許税:90,000円
(事業所が2つ以上の場合、1つ増加毎に+90,000円)
更新時更新手数料:55,000円(事業所が2つ以上の場合、1つ増加毎に+55,000円)

労働者派遣事業を開業したい方にとって、許可取得までの総額費用が一番気になるところではないでしょうか?

当事務所では、労働者派遣事業許可取得のためのご相談、申請要件確認、申請書類の作成、添付書類の取寄せ、申請代行、ご依頼者が最も楽なフルサポート制を採用しています。

報酬に関しても、原則必要経費全て込みの料金(各種証明書取得・郵送料・交通費等込)ですので、依頼前に費用の総額が分かりやすいと大好評を頂いています。後から、証明書実費を〇〇円お支払いくださいってことはありません。

※収入印紙は郵便局で購入。  ※登録免許税は、郵便局・銀行等で納付。

許可有効期間

労働者派遣事業新規については3年、更新については5年